2012年 08月 10日
うらたじゅん個展のお知らせと志摩線の話 |
京都時代からの古い友達、うらたじゅんの個展『駅で待っている』のお知らせです。9月15日(土)~30日(日)迄、京都出町のトランスポップギャラリーというところでやるそうです。
詳しくはうらたじゅんのブログへ
載せた絵は多分廃線になった野上電気鉄道の始発駅をイメージしたものだと思います。
子供の頃、時刻表を見るのが好きで、路線図を眺めていると全国の旧国鉄の主要な駅にはかなりの数の私鉄の始発駅がくっついていて、そういう国鉄との乗り換えの状況とか、ホームが「ヨ」の字のように改札の手前で繋がっていたりする様子を想像して白昼夢を楽しんでいました。いつか実際にそこへ行って目で確かめてみるぞと思っているうちに世の中は想像を絶するスピードで新陳代謝を繰り返し、ローカルな私鉄や旧国鉄の盲腸線などが消えてゆき、ぼくが訪れるまで待っていてもらうことは出来なかった。それでも夏休みなどにぼくの田舎、志摩へ行くときには必ず乗り換えなければならない参宮線の終点鳥羽駅と、賢島までの三重交通の始発鳥羽駅が同じホームの高さで繋がっていたりするのがこのうえない幸せでした。三重交通の電車は一二両編成くらいの小振りながらわりと普通の電車でしたが、出発のときにドアが閉まると同時に「チン」とチンチン電車のようなベルが鳴るのが面白かった。電車の本数も昔は一時間に一本か二本くらいだった筈で、その時間待ちに昔の風情ある鳥羽の本通を歩いて食事などをするのも楽しみでした。
実はその先にもおまけの楽しみがあって、賢島へ着くとそこから巡航船に乗って生地和具へとたどり着く船旅の、賢島のいかにも貧相な構えの真珠店の中にある発船券所とか、和具の簡単な桟橋にトタン屋根の船着き場とか、ぼくには普段味わえない田舎のワイルドな生活よりも、行き帰りのめくるめく光景の方が遥かに宝物なのでした。
うらたじゅんのこういう絵はやっぱり同じ電車好き駅好きの愛情がありありとみえて、自分の目で観て描いているように楽しめるのが好きです。
(うらたじゅんさま、絵の無断掲載お許しください)
[追記]
この野上電気鉄道の電車、なんだか懐かしい気分にさせるなあと思っていたら、やっぱり! 近鉄が入る前の時代の三重交通の電車とかなり似通った外観のものでした。「ナローゲージ」といって線路の幅が少し狭く、電車も若干小振りなのです。だから「チン」と鳴るベルも電車の可愛らしさと相互作用しているんだと思う。
このサイトのページには鳥羽駅の様子も少し写っていたり、沿線の雰囲気も分かったりで嬉しいものです。今はもう近鉄特急が乗り入れして雰囲気がだいぶ損なわれてしまったけれど、沿線の景色はそれほど破壊されていないのが、いまだにローカルな地域だということを表しているのかな。名古屋から下って行くと伊勢市まではのどかな伊勢湾沿岸地域の気候なんですが、伊勢から一つ山越えをすると一気に南国的気候に転じてしまうのが、本当に不思議な志摩というところ。英虞湾を隔てたぼくの生地、和具では昔は巡航船で一日遅れで新聞が届いていたものです。
by digitaris
| 2012-08-10 00:52
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