2010年 06月 30日
積み木崩し |
赤ん坊と積み木で遊んでいるようなものです。
せっかくある程度まで積み上げた山を、飽きたのかいきなりめちゃめちゃに壊してしまう。そしてニカっと屈託のない笑顔。怒る気にもなれません。積み木という遊びを考えた側の教育的戦略は、ひとつひとつものごとを積み上げて構築する、という思考過程を植え付けることにあるのでしょうが、赤ん坊は積み木の山を壊されたときの大人の落胆した反応を読み取って、それから先は積み上げることよりも破壊することの方に喜びを見いだすようになる。Jリーグの試合を観ているとそれに似たものを感じます。マイボールにしたものをなんでもないシチュエーションのなかで簡単に相手に渡してしまう。苦労して攻撃を組み立ててゴール前まで迫ったまではいいものの、全く目的の感じられない一本のパスですべてが台無しになってしまったり。そういうことの繰り返しを延々何年も観せられてきたような気がします。代表のチームも似たり寄ったりで、個人の技術は若干高いものの、最終局面では結局元の木阿弥という、やっている方も観ている方もどっと体力を消耗してしまう結果を繰り返してしまうわけです。
南アフリカでの日本代表チームは侍なのだそうです。お金持ちなので刀は名刀村正みたいな高級品を支給されたんですが、いかんせん付け焼き刃だったのでグループリーグを戦ったら刃がぼろぼろになってしまった。引きこもり戦術で戦えるようなメンバーを選んでなかったので控え選手を有効に使えず、ずっと同じメンバーで試合をやるしかなかった。パラグアイ戦ではもうなんだか皆ウロが来てしまっていたようで、そうなるともとのノビ太くんに簡単に先祖帰りしてしまう。
パラグアイもなんですね、プレーレベルは格段に上なのに何故か相手のリズムに合わせてしまって自らを貶めてしまったようにみえました。南米ではそこそこ強いのに地味な印象なのはそういうところのせいかもしれません。でもなんだかんだ言っても勝ちきってしまう、そこは小さいようで大きな差なのかなと思います。
岡田監督は「評価一変」名将になったのだそうです。いったい誰が、何人くらいの人が言っているんでしょうねえ。笑かせます。スイスの合宿から選手も監督も一から出直さねばならなくなったわけで、そういう意味ではよく立て直せたもんだなあと感心するのですが、それだからって「名将」「名チーム」なの?岡田さんは'98年ワールドカップ日本初出場のときもギリギリになってチームを立て直しています、でもそのときは「名将」とは言われなかった。確かにサッカーコーチとしてそういう能力は高いような気がします。今回もそれでベスト16まで行けたのですから(もちろんツキも思いっきり味方しました)。でも今回、本戦に臨むまでの二年間は殿様サッカーをやろうと頑張ってきたはずです。それを寸前ですべて反古にしてしまった。最大の積み木崩しは岡田さんじゃないかと思う。戦い方は'98年とほとんど変わらないし、選手交代の采配にしてもほとんどが同じ時間帯に同じメンツというような岡ちゃん定食。まあそれしかやりようがなかったのは分かりますが。
一から出直したというところで一番成長出来たのは選手たちだと思います。「積み木崩し」というのは皮肉でもありますが、破壊こそすべての創造の源であるというような意味も含まれています。そういう意味で言えば今回のワールドカップの日本代表は、思いがけなくも観ている方に充実感を与えてくれたんじゃないかしら。今までの殿様サッカーで勝てたときは多くありましたが、充実感を覚えたことはなかったし、逆に何か間違ってるんじゃないの?と思うことの方が多かった。今の代表チームなら、ちょっと恥ずかしいような戦い方をしても、それで負けてしまっても何となく充実感が残るような気がします。ファンの心境というものは元来そういうものだということを今のサッカ−協会は理解出来なければいけない。岡ちゃんが名将になったおかげで批判は回避出来たと溜飲を下げているようではまあ未来はないです。
積み木崩しの日本代表、「批判してくれる人がいなかったら、ここまで来れたかどうかも分からない」と、本田くんはあくまでも冷静でカッコよかった。次のワールドカップには本田や長友、松井もまだまだやれそうだし、歯を食いしばって彼らをじっと見つめていたであろう森本や内田や香川、そしてガンバの宇佐美、京都の宮吉、セレッソの家長、浦和の山田直輝等々、面白そうな選手が続々出てくるに違いありません。ちょっとディフェンスのタレントが不足ですが、とにかく期待したいもんです。まあそれ以前に、アジアの予選を勝ち抜けるかどうか、そっちの方も難易度は高くなって来そうですが。
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by digitaris
| 2010-06-30 16:18
| サッカ−など